妊娠すると誰にでも起こりうる可能性のある妊娠高血圧症候群は、母体だけではなく胎児にも悪影響を及ぼすとても恐ろしい病気です。妊娠高血圧症候群になってしまうと、これといった治療法もなく、一番の治療法といえば出産することです。けれど産むにはまだ早い時期に発症してしまうとあらゆるトラブルの引き金となり最悪の場合、死に至るケースもあります。そんな恐ろしい妊娠高血圧症候群とはいったいどうゆうものなのか?
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目次
妊娠高血圧症候群とは
妊娠20週(6ヶ月)以降から高血圧になり産後12週までに正常に戻るといった状態を妊娠高血圧症候群といいます。妊娠20週(6ヶ月)〜32週未満で発症する早発型は特に重症化する恐れがあります。
妊娠中の血圧の基準値
至適血圧:90〜120/50〜80mmHg
正常値:130/85mmHg未満
正常高値:140/90mmHg未満
妊娠高血圧症候群:140/90mmHg以上
妊娠高血圧症候群の原因
妊娠高血圧症候群の具体的な原因は未だはっきりと分かっていないのが現状です。最も有力と考えられている原因の一つに妊娠15週までに胎盤の血管が正常とは異なった作られ方をしてしまうことにより起こるとされています。正常の場合、胎盤は子宮にくっつき細胞がその壁の中に侵入して子宮側の血管の壁を一度壊してより多くの血液が胎児に流れるように血管の壁を作り直していきます。けれど妊娠高血圧症候群ではこの血管の壁の作り直しがうまくできずその結果、胎児への酸素や栄養が十分に行き届かずそれによって母体に負荷がかかり高血圧がおこってしまう「血管の壁に起こる異常」というのが一つの説となります。
妊娠高血圧症候群の症状
・高血圧
・頭痛
・めまい
・倦怠感
・蛋白尿
・むくみ
・体重増加
妊娠高血圧症候群になりやすい人
・妊娠前から持病がある
・15歳以下もしくは40歳以上の方
・初産の方
・肥満
・多胎妊娠
・妊娠高血圧症候群にかかったことがある人
妊娠高血圧症候群の母体への影響
重症化した場合
子癇(しかん)
急激に起こった高血圧によって脳の中の血液が増え、脳の中にむくみが起きてけいれんを引き起こす。妊娠20週(6ヶ月)頃〜分娩期に発症することが多いが、稀に産褥期に発症するパターンもある。
HELLP(ヘルプ)症候群
溶血・肝機能障害・血小板減少の3つの特徴を持つ疾患。
常位胎盤早期剥離
胎児がまだお腹にいるうちに胎盤が子宮壁から剥がれてしまうことを常位胎盤早期剥離といいます。通常であれば出産してから数分後に自然に剥がれます。しかし、出産前に剥がれてしまうと剥離した部分から大量出血をおこし胎児に酸素や栄養が届かなくなり、母子ともに命の危険にさらされてしまいます。
妊娠高血圧症候群の胎児への影響
胎盤から酸素や栄養がうまく行き届かず胎児発育不全や胎児機能不全などを引き起こすこともあります。さらに酸素不足による低酸素症や栄養不足によって低出生体重児になる可能性が高くなります。
妊娠高血圧症候群の軽症
収縮期血圧:140mmHg以上160mmHg未満
拡張期血圧:90mmHg以上110mmHg未満
どちらかに該当
尿蛋白は300mg/日以上〜2,000mg/日未満
妊娠高血圧症候群の重症
収縮期血圧:160mmHg以上
拡張期血圧:110mmHg以上
どちらかに該当
尿蛋白は2,000mg/日以上
妊娠高血圧症候群の治療法
<食事療法>
食事では血圧の上昇を抑えるために塩分制限・カロリー制限がとても重要になってきます。けれど極端に減らしてしまうと逆に血圧を上昇させてしまうこともあるので、摂り過ぎず減らし過ぎず栄養のバランスがとれた食事を心がけるようにしましょう。
<安静>
激しい運動や疲労、ストレスは禁物です。心と体を休ませて精神的・肉体的にも安定した生活を送りましょう。
<薬物療法>
改善されない場合は妊娠中でも使用できる降圧剤を投与します。効果としては、交感神経抑制と血管拡張を目的とします。なお、根本治療ではなく、あくまで予防改善を目指します。
<妊娠中止>
妊娠していることが原因なので一番は妊娠を終わらせることです。重症であれば緊急帝王切開になることもあります。
まとめ
妊娠初期など早い段階から妊娠高血圧症候群を発症してしまうと重症化する恐れがもっとも高く、あらゆるトラブルを引き起こし、最も危険な状態に陥る可能性があるということがわかりました。妊娠中期や妊娠後期に発症すると胎児の成長に関わらず緊急帝王切開になったり、さらに産後に妊娠高血圧症候群になることも考えられます。妊娠高血圧症候群になってしまってからの改善はとても大変なので、できれば発症する前から予防し重症化しないように心がけていくことが大切です。
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